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島唄カフェ いーやーぐゎー
島唄コラム
琉球新報「南風」(隔週連載)
2007年1月16日〜6月19日

第1回
三板名人

第2回
核シェルター

第3回
歌碑巡り

第4回
フリージャズ

第5回
蓄音機コンサート

第6回
御冠船夜話

第7回
壺宮通り

第8回
伝説のナークニー

第9回
しゅーまんぼーしゅー

第10回
美ら弾ち(ちゅらびち)

第11回
新風(みいかじ)

第12回
島唄カフェ


蓄音機コンサート

 熊本行きを誘われたのは一年前のことであった。記憶の彼方にあった約束は一ヶ月前になって突然準備の催促が来た。その日はダブルならぬトリプルとブッキング(予約)があり、一年前の先行予約を優先することで決着がついた。

 蓄音機コレクターの山城政幸氏の参加している、熊本博物館SPレコードと蓄音機を楽しむ会主催の「蓄音機でレコードを楽しむコンサート“沖縄音楽の特集”」の催しに県立芸大の与那覇有羽君を連れて三人で出席したのは二月の第四日曜日。

 蓄音機というと最早忘れ去られた時代の産物として、骨董屋のオブジェとしてしか振り向かされないものとなっている。実際音質が悪ければ滅びるしかないわけで、我々がよく耳にする日本で普及した通常の蓄音機は懐古主義を満足させるほどの音しか再生しない。私もそう思っていた。しかし人間の技術というのはそんな単純ではないようだ。一九一0から二0年代にかけてのヨーロッパの技術の粋を集めた蓄音機たるや、純粋に肉声に近い音に加えて時代の艶かしさをも再生することができるのだ。一度体験するとその虜になることはうなずけられるし、デジタルサウンド時代における最も贅沢な音質とも言えそうだ。

 ともあれ、そういうことが博物館でしか味わえないというのも何だかさみしいことではあるが、沖縄音楽を待っている方々もいるということは嬉しい限りである。戦前戦後の二大レーベル、マルフク、マルタカを中心にSPレコードで琉球民謡 を共に鑑賞し、実際の三線の演奏で場を盛り上げることができた楽しいひと時は貴重な経験であった。帰りの電車で反省会と称して飲みすぎたのは三人とも少し浮かれ過ぎていたかもしれない。

2007年3月13日 琉球新報夕刊「南風」掲載より
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