Vol.14「平成のワタブーショー」を問う

ウチナーポップ音楽の元祖・照屋林助さんが亡くなった。林助音楽のエキスは戦後のコザの具現であった。その存在自体も、我々ほんの少しでも一緒に呼吸したことのあるウチナーンチュには生きる歴史であり、尊敬すべき歴史の改革者であったといっても過言ではない。
しかし、私はその偉大さを他人に説明することがこれまでできなかった。彼はアーティストであるからにして、作品=音源(CD)を聴いてもらうのが一番である。
代表作は何ですか。代表CDはどれですか。と訊かれた時、ハイ、これです。というものがない。少なくとも私はそう考える。だからといって、ライブの達人・照屋林助の評価が下がるものでは決してない、と説明しても氏を知らない人が聴いたらどうなんだろうと悲観的になってしまう。
そこで私はレコードの音源を聞かせて、例えば「沙汰んならん呉屋主」とか「年中口説」「ハンドー小」とかを聴かせたり。マルテルレコードでの氏のユニークな企画(知名定男氏を従えての)などを説明して林助芸の凄さを解らせようとしたもの。それ程に既存のCDの評価は私には低いとしか言いようがない。
 これから追悼盤CDとか、追悼ライブとか企画されることと思うが、プロデューサーFあたりがしゃしゃり出てくることを私は相当危惧する。彼のプロデュースした「平成のワタブーショー」(1996)などはちょっと酷かもしれないが、ある年代以上のウチナーンチュにすれば、評価点は30点にも満たないのではないか。
私とT氏はその録音現場にいて、林助芸のドキュメントとしてはあまりのテンションの低さに落胆して、新たな企画を画策したのだが、ものの見事につぶされてしまった。
結局、照屋林助という人はCDを聴いてもよくわからないが、実際行逢ってライブや話を聞くと「スゴイ」と返ってくる。残念なことだ。
 冗長で安易でジンヌサンミン(銭の計算)。今改めて聴いても当事と同じ感想である。あまり書くと、天国の林助さんに叱られそうなので、このへんでよします。今こそ氏の残された作品(映像を含めて)を世に問い、代表作というものを発表されん事を願うばかりです。

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