Vol.4「十九の春」、知られざる名盤を鑑賞する。

前回(vol.1まるみかなーってどういう意味ですか?)解説できなかったレコードの解説を少し…。 昭和16年、日本が大戦に突入する年に録音された、普久原京子の「ケーヒットリ節~マルミ加那節」(太平丸福レコード)は昭和35年(1960)に復刻された。
普久原京子は、戦後復興期の沖縄の若手女性歌手(歌手を目指す人)の目標であった。
1940年に普久原朝喜氏と結婚し、夫妻は精力的にレコード政策に取り組んだが、42年には戦時下でその製作中止を余儀なくされている。
丸福レコード35周年・名盤シリーズの復刻では、A面に「マルミ加那」、B面には最初の夫人の鉄子を亡くした悲しみを唄った「下千鳥」となっている。
島唄ファンなら一度は聴いてみたい唄のひとつである。
1962年「片思い」でデビューし、今では沖縄を代表する女性歌手の大城美佐子にとっても、もちろん普久原京子は手本であり、目標でもあった。
大城美佐子歌う「汀間当」(「絹糸声」:あばさーレコード)の「まるみかなー」も一度は聴いてもらいたい。 

さて、今回取り上げるレコードは、島唄ファンならずとも誰でも知っている「十九の春」だが、そんじょそこらの(失礼)「十九の春」ではない。
1975年コロムビアより出た、未だデジタル化されていない超入手困難な音源なのだ。
『決定盤 十九の春/二見情話』知名定男・大城美佐子
相方が知名定男。プロデュースは竹中労。
ジャケットを見ていただきたい。
まさに決定盤。
ウタムチ(イントロ)の最初のテンから、まわりの雰囲気を一瞬にして変えてしまう音。
ややハスキーな大城美佐子のシンコペートした出だしの声は、何ともいえません。
それにレスポンスする知名定男の美声。
ここでお聞かせできないのが残念ですが、文字数が尽きたのも残念。

十九の春
本竹裕助補作詞/沖縄民謡/佐々木永治編曲 

私があなたにほれたのは ちょうど十九の春でした
いまさら離縁というならば もとの十九にしておくれ

もとの十九にするならば 庭の枯をみてごらん
枯木に花が咲いたなら 十九にするのもやすけれど

みすて心があるならば 早くお知らせ下さいね
年も若くあるうちに 思い残すな明日の花

1銭2銭の葉書さえ 千里万里と旅をする
同じコザ市に住みながら あえぬ吾の身の切なさよ

主さん主さんと呼んだとて 主さんにゃ立派な方がある
いくら主さんと呼んだとて 一生そえない片思い

奥山ずまいのウグイスは 埋めの小枝で昼寝して
春がくるような夢をみて ホケキョホケキョと鳴いていた

『決定版 十九の春/二見情情話』 知名定男・大城美佐子 日本コロンビアレコード CD 253-A
2002年7月8日

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